6月に発表された食品安全委員会の「餅に次いで、飴と同程度」との答申については当ブログでも紹介しました。数値計算根拠がかなり強引で「こんにゃくゼリー=悪者」とするための意図的な資料だと受け取っていたのですが、必ずしもそうではなかったようです。確かに、結びの部分は『「リスクを科学的に評価することは困難」としながらも、事故件数などを踏まえ、危険性はあめ類と同程度と推測できると結論付けた。』であって、規制する適切な根拠は無しとなっています。こんにゃくゼリー:食品安全委、リスク評価を批判 消費者庁、再諮問へ
窒息事故が相次いだ「ミニカップ入りこんにゃくゼリー」のリスク評価を巡り、19日開かれた食品安全委員会の会合で、消費者庁の方針に批判が相次いだ。同庁は7月、「餅やあめよりリスク要因が多く、業者に商品の改善を促す」と打ち出したが、食品安全委の委員から「中立公正なのか疑問」などの異議が出た。消費者庁は同委に再諮問する方針を示し、法規制するかの判断がさらにずれ込む見通しとなった。
食品安全委は6月、こんにゃく入りを含むミニカップゼリーの窒息の危険性について、「餅に次いで、あめと同程度」と消費者庁に答申していた。同庁は独自に信州大に窒息事故の再現実験を依頼。「重い事故につながるリスク要因が複数ある」との結果を受け、7月の方針をまとめた。食品安全委の答申よりリスクを高く評価した形となり、この日の食品安全委で反発を招いた。
委員からは「都合のいい結論を出すために新たな実験を行うことにつながる」「消費者庁が自らリスク評価をするのは中立公正でない」などの批判が出た。消費者庁は席上、再度の諮問を表明したが、前回答申からわずか2カ月での再諮問の方針は異例。【山田泰蔵】
では、食品安全委員会の指摘する7月の「餅や飴よりリスク要因が多く、業者に改善を促す」の根拠とはどのような内容だったのでしょうか?
こんにゃくゼリーの窒息、重症率85% 消費者庁分析この85%以上の根拠を見ていくと荒唐無稽と言わざるをえません。発表資料によると、
こんにゃく入りゼリーによる子どもやお年寄りの窒息事故防止策を検討している消費者庁は30日、都市部を中心に2006~08年に救急搬送された約4千件の窒息事故のうち、同ゼリーが原因となった事故の85%が、命の危険がある「重症」以上だったとの分析結果をまとめた。餅やアメなど他の食品の「重症率」を大きく上回り、政府の食品安全委員会が「アメと同程度の事故頻度」としたリスク評価とは異なる実態が浮かび上がった。
東京消防庁や政令指定都市の消防当局などからデータを集め、窒息事故4137件のうち原因食品がはっきりしている2414件を分析。その結果、同ゼリーによる事故は7件と件数は少ないものの、うち2件が「重症」、4件が命の危険が切迫している「重篤」だった。406件あった餅は重症・重篤・死亡の重症以上の事故が54%、アメ(256件)は1%だった。
食品安全委は同ゼリーについて、1億人が一口食べた場合、2.8~5.9人が窒息死する恐れがあると推計。食品ごとの摂取量の差を踏まえると、餅(6.8~7.6人)には及ばず、アメ(1.0~2.7人)と同程度の事故頻度になるとした評価書をまとめ、6月10日に菅直人首相に答申した。(河村克兵)
東京消防庁等と連携し、食品・製品等に関する窒息事故について、具体的な原因、被害者の年齢、被害程度を情報収集
・東京消防庁(平成18~20年) 3488件
・その他政令市消防局(平成20年) 648件
・こんにゃく入りゼリー窒息事故情報2件
(加古川市(平成19年)、松本市(平成20年))
となっており、こんにゃくゼリーについてのみ個別案件を2件追加しています。わずか2件ではなく2件もです。
資料から読み取ると
全体…軽症1、重症2、重篤4となり、追加2件については、重症以上ということになります。重症率では、東京消防庁:75% その他政令市消防局:100%で本来の統計としては80%、さらに追加2件を加えることにより85.7%となっているのです。80%でも充分危険に感じられるのですが、なぜ改竄まがいの操作を行ったのでしょうか?
東京消防庁…軽症1、重篤3
東京消防庁のデータをみると、1位は「しらたき・糸こんにゃく」で80%ですので、このあたりへの配慮でしょうか。しらたきや糸こんにゃくに対しても形状・表示の見直しということになってしまいますから。でも、死亡数19件の餅や14件のご飯よりも死亡数0件のこんにゃくゼリーを問題視するといのもなんだかね、という。
この資料で分かったことは、飴の死亡リスクは0%だったということです。つまり、搬送率×死亡数として仮定した食品安全委員会の数値も根拠として否定されたようなものです。
確かに、窒息死などは製品の形状などで抑制可能な部分は多いと思います。お金を使うのならば、無駄な研究を進めるよりも現状把握ができる実態調査に重きを置くべきではないでしょうか?仮定の数値が踊り数値遊びになっているとしか思えません。
東京消防庁のデータをグラフ化してみました。左から事故発生数の並びです、同数の場合は同項目重症発生率の高い方を左としています。
カップ入りゼリーとこんにゃく入りゼリーは区別されてます。